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エンタメ
ミュージックビデオは歌詞表示中心のリリックビデオの時代へ
 歌詞のフレーズが画面の中を飛び交うミュージックビデオ(MV)のことを「リリックビデオ」と呼ぶ。正式なMV発表前の仮映像や、YouTubeなどでファンが二次創作として制作したものだったが、日本の場合は少々事情が違う!?

◆元々は歌詞の聞き取りにくさを補うために発生した日本のリリックビデオ

 今やレディー・ガガも新曲「アプローズ」をリリックビデオで発表するなど、海外でもすっかり定着した感のあるリリックビデオ。リリックビデオ流行の原因は洋楽からと言われているが、実は日本のほうが先にそうした歌詞動画は流行し、2009年の段階で大きなブームを呼んでいた。

 もちろん当時はリリックビデオという呼び方はされていなかったが、同じ頃に大きく盛り上がり始めたのが、歌声合成ソフトを使った音楽。「初音ミク」という世界レベルの人気キャラクターを生み出しオリコンチャートを席巻するまでになった。その音楽のほとんどが発表されていたのが、動画投稿サイトの「ニコニコ動画(現・niconico)」である。

 ソフトがバージョンアップを重ねる中で、すっかり人間の歌声に近い領域にまで成長した同ソフトだが、当初の出来栄えは人間の声とは程遠い仕上がりで、さまざまな工夫でユーザーに音楽を届けることが必要だった。なかでも歌詞の聞き取りにくさは最大の問題点で、制作者が歌詞を届けるために動画に歌詞を埋め込んでいったのが、リリックビデオの始まりと言われている。代表作にはWhiteFlame feat 初音ミク「千本桜」、れるりり「脳漿炸裂ガール」などがある。

◆海外ではファンの二次創作として誕生したリリックビデオ

 いっぽう海外では、音楽ファンが洋楽アーティストの楽曲をYouTubeなどに投稿する際に、歌詞を使ったのが始まりだ(歌詞・曲などの著作権処理はYouTubeが一括して行っている)。

 初音ミクのときと同様、近年どんどん豪華になるサウンドと反比例して聞き取りにくくなった歌詞が、はっきり理解できると人々に歓迎され、ついにはアーティスト本人がリリックビデオを手がけるようになったのだ。とくにヒップホップや電子音楽で力を発揮している。

 今では、表示させる文字のフォントやタイミング、文字を書く場所にもこだわった、ポップアート作品の一つとして世界中の人々に楽しまれている。

 その進化はとどまる所を知らず、小南千明の新曲「CLOSET」のリリックビデオは、歌詞を触っていくと得点が加算されるゲーム形式になっており、文字通り、今までより歌詞に“触れながら”楽しむことができるのだ。

◆音楽を聴くだけではもったいない、見て歌って世界中の人と楽しむものへ

 音楽表現の幅はますます広がっているが、世界中でCDの売り上げは落ちている。だが、ライブやコンサートのチケット売り上げはむしろ伸びている。世界中のコンサートやツアーに関する統計を取っている業界誌Pollstarによると、2016年のコンサート売り上げは過去最大が見込まれているそうだ。

 レコードが発明され音を閉じ込められるようになってから、音楽は長い間、聴くことがメインの娯楽となっていた。だが本来の音楽とは、見て、奏でて、踊って、歌って体で楽しむものだった。

 インターネットの発達で、さらに音楽に気軽に触れられるようになった今だからこそ、気に入った音楽は歌って楽しみたいものだ。リリックビデオの隆盛の裏にはそのような需要があるのかもしれない。Youtubeを検索してみると、中には海外の人が、わざわざ日本語の歌詞をローマ字表記にして歌えるようにした作品まで登場している。  

 日本でもPerfumeの新曲「Hold Your Hand」やONE OK ROCK「Clock Strikes」、サカナクションの名作「アルクアラウンド」など、とんがった音楽性のアーティストからどんどんリリースされているリリックビデオ。今まで何気なく聞き流していた歌詞の良さを再認識することが多いので、意識して見てみてはいかがだろうか。

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